この10月、消費増税の効果をアピールするテレビCMや新聞広告などが打たれた。発注元は内閣府政府広報室で、予算は2億6000万円に上った。テレビCMには人気子役の芦田愛菜が登場、「子育て、医療、介護、年金──消費税率の引き上げ分は社会保障に着実に使われています」などとアピールした。
内閣府はその目的を「4月の増税から半年が経ち、増税で社会保障制度に具体的な進展があったことを国民に伝えるために制作した」(同広報室)と説明する。一方で、官邸筋は本音を明かす。
「10%への消費再増税の決断を12月上旬に控え、国民の増税への拒否反応を和らげる地ならしだ。内閣府を使った政府広報は安倍政権のメディア対策の中核的な位置を占めている」
そもそもCMの内容はデタラメである。たとえば、歩く子役の脇に複数のボードが掲げられ、〈保育の受け皿を約19.1万人分拡大〉などと謳うくだりだ。
厚労省が昨年度から2か年計画で進めている「待機児童解消加速化プラン」を指すが、19.1万人はあくまで見込み値。5月末時点の確定値で拡大分は11.8万人分にとどまっている。
しかも同プランの今年度予算約6900億円のうち消費増税充当分は1割未満(約680億円)でしかなく、当の厚労省は「8%に上がったことによって保育施設などの整備が進むということはない」(雇用均等・児童家庭局保育課)と説明する。
消費増税による増収分のほとんどは公共事業などに充てられるのが現実なのだ。「すべて社会保障に」は明確な嘘である(安倍首相は国会答弁で社会保障に充てるのは2割だと認めている)。
※週刊ポスト2014年11月21日号