今年のプロ野球FA市場は投手では金子千尋(オリックス)、平野佳寿(オリックス)、成瀬善久(ロッテ)ら、野手では鳥谷敬(阪神)のほか大引啓次(日本ハム)らが争奪戦になると見られていた。
中でも水面下で目まぐるしく動いたのが主力捕手だった。嶋基宏(楽天)、炭谷銀仁朗(西武)、細川亨(ソフトバンク)、相川亮二(ヤクルト)らが揃ってFA権を取得。特に昨年の楽天日本一の立役者である嶋が移籍する可能性が高いという情報に、各球団は色めき立った。
しかし最終的に嶋は残留。中日移籍といわれていた炭谷も残留の道を選び、相川の巨人移籍が確定的とされる程度で、「大山鳴動して鼠一匹」に。この裏には、様々な暗闘があった。
「嶋の本命は中日だった。岐阜生まれで中京大中京高出身の嶋は地元でプレーしたかった。中日の正捕手は選手としての引退が近い谷繁元信・兼任監督で、十分可能性はあった。しかし中日は将来性を考え、嶋より2歳若い炭谷を本命にしたため、嶋は楽天残留を選択した。
炭谷の中日行きは今年の夏頃からされるほどで、既定路線といわれていた。しかし一転、炭谷も残留を決める。その裏には、落合博満GMの容赦ない査定を耳にしたためだといわれています」(スポーツジャーナリスト)
炭谷の残留で割を食ったのが巨人だった。これまで長きにわたって正捕手を務めてきた阿部慎之助を一塁にコンバートした巨人は、若い小林誠司だけにマスクを被らせるのは心もとなく、嶋の獲得を目指していた。
「巨人は仕方なく、38歳の相川にターゲットを転じた。しかし29歳の嶋ならまだしも、阿部より年上の捕手を獲る意味がどこにあるのか」(巨人OB)
※週刊ポスト2014年11月21日号