犬も猫も飼い主にとってはかけがえのない家族である。もし面倒を見る人間が亡くなった場合、その大事な家族はどうなるのか。そんな中、ペットの悩みが増えているなかで、救いの手を差し伸べる動きもある。
有効活用したいのが自治体のサービスだ。千葉県の『飼い主さがしの会』は、「ペットを飼えない」人と「ペットが飼いたい」人をマッチングする行事を県内で月2回、開催している。
「参加費は無料です。譲渡を希望されるのは子犬、子猫のケースが多いですが、成長したペットや高齢者の飼い主、そのご家族も参加されています。あくまでマッチングの場なので、“不成立”の場合はペットを連れて帰っていただきます」(千葉県動物愛護センター)
東京都板橋区は、犬や猫を譲りたい人が登録する「ワンニャンバンク」を推進する。希望者は住所、氏名や犬猫の全身写真とともにメールまたは封書で登録する。譲り受けを希望する人はホームページで写真などの情報を吟味して、板橋区保健所経由で登録者に譲渡を申し込む。その後は当事者同士で話し合いを進めるシステムだ。
登録は無料だが、板橋区在住者に限られる。同様の無料サービスは多くの自治体で実施されている。高額になるが「老犬ホーム」という手段もある。「老人ホーム」のペット版だ。
熊本県菊池市の老犬ホーム「トップ」の費用は1匹あたり年36万円(先払い、医療費別途3万円)。エアコンのきいた快適な室内で現在、34頭の犬が生活している。犬の多くは14~15歳で人間なら90歳前後にあたる。寝たきりの犬も多い。
「7割の飼い主が高齢者です。抗がん剤治療の際、雑菌を持ち込みやすいペットを飼うことを禁じられ、ウチに預けた高齢者もいます。飼い主の健康面に不安がある場合は、ご家族も契約に立ち会い、万が一の時は引き継いでもらっています。また、運営ブログに日々のワンちゃんの様子をアップし、ご家族に現状を伝えています。残念ながら老犬が亡くなったら手厚いお葬式で弔います」(トップの緒方心代表)
老犬ホームは都市部を中心に増加傾向にある。都内では1匹あたり150万円などかなりの費用がかかるが、その分サポート体制は整っている。
※週刊ポスト2014年11月21日号