「仙台」「会津」など自動車の「ご当地ナンバー」第1弾が登場したのは2006年。そして間もなく迎える11月17日の第2弾では10地域のナンバーが加わり、その中に東京都内の2つの地域も新登場する。「杉並ナンバー」と「世田谷ナンバー」である。
杉並ナンバーになる人々は、「練馬ナンバー」から変更されるということで、新車購入を11月17日まで待つ例も見られるほど好評なのだという。ところが、世田谷区住民は今までの「品川ナンバー」が「世田谷」に変更されるのが、どうも気に入らないらしい。
なんともバカげた話に聞こえるが、区民にとってはよほどの重大問題なのか一部の世田谷区の住民は“実力行使”に出た。
10月28日に「ブランド力のある品川ナンバーが使えなくなる不利益」などとして、世田谷ナンバー導入を推進した保坂展人区長らに損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ(原告は区民132人)。
東京・世田谷区のカーディーラー営業マンがいう。
「会社経営者などは、マイカーが『世田谷』になることを嫌い、使用者と所有者の名義を変える人もいます。そんなに世田谷が嫌なら引っ越せばいいのにといいたくなりました」
確かに原告の提訴理由には矛盾点も見受けられる。
「ブランド力のある品川ナンバーを使えない不利益」をいいながら、「世田谷区と分かれば身代金目的の誘拐の標的にされかねない」(住民の一人)と心配しているようだが、それは世田谷ブランドの「高さ」を自ら認めていることになるのでは……。
さらには「プライバシーが侵害される」というが、それなら世田谷区よりも人口が少ない地域のナンバーはすべてプライバシー侵害になってしまう。
地元への愛着を高めるための「ご当地ナンバー」の導入は地区の不思議な“格差意識”や住人の見栄を明らかにしてしまった。
※週刊ポスト2014年11月21日号