昨今様々な「虚報」が明らかになった従軍慰安婦を巡る件で想起するのは、あの「女性国際戦犯法廷」だ。
2000年から2001年にかけて「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン)や韓国挺身隊問題対策協議会らが中心になって東京などで開き、元従軍慰安婦を「証人」に立たせた「法廷」である。
「被疑者」(昭和天皇や日本国)には弁護人がつかず、「証人」に対する反対尋問もなく、冗談にも「法廷」とは言いがたく、出来の悪い人民裁判のようなシロモノだった。
「法廷」に流された映像の中で元従軍慰安婦たちが「被害体験」なるものを語り、一部の人が「法廷」で「証言」に立ったが、強制連行によって従軍慰安婦にされたと証言した人はひとりもいなかった。
そんな反日団体による反日プロパガンダにすぎないものが「法廷」と称され、最終的に「天皇裕仁及び日本国を、強姦及び性奴隷制度について、人道に対する罪で有罪」とする「判決」が下されたのである。
しかも、それをNHK(教育テレビ)が大真面目に取り上げたのだから、今更ながら呆れざるを得ない。
「女性国際戦犯法廷」は、韓国政府の姿勢と歩調を一にするものとはいえ、形の上では民間団体による運動だ。しかも、連携しているのはせいぜい北朝鮮、中国である。
●文/八木秀次(法学者・麗澤大学教授)
※SAPIO2014年12月号