精密検査の結果、脳に異常は認められなかったが、頭部と下顎の挫創、腹部と左大腿骨挫傷、右足関節捻挫と5か所の負傷で全治3週間と判明した羽生結弦(19)。11月28日開幕のNHK杯出場が絶望視されている。
11月8日のフィギュアスケートGPシリーズ第3戦(中国)の直前練習で中国選手と激突し、頭と顎から出血しながらも強行出場して4回転ジャンプにも挑んだことは、10日過ぎた現在も賛否両論の大論争が続いているが、なぜか日本スケート連盟(JSF)の反応だけが鈍い。現地で取材したスポーツ紙記者がいう。
「6人での練習時間など見直すよう国際スケート連盟に意見書を出してもいいはずなのに何も行動していない。そもそも、今大会に日本チームのドクターは帯同しておらず、羽生の治療にあたったのは米チームの女性医師でした。五輪金メダリストの扱いとは思えない」
なぜ出場を止めなかったのかという批判に対しても、「出場するかどうかを決めるのはコーチと選手。連盟側が判断するようなルールはない」と突き放すようなコメントを出したのみだ。「実はJSFと羽生の間には大きな溝があるんです」というのはJSF幹部だ。
「原因は現在のJSFフィギュア委員長の伊東秀仁氏と、五輪監督を長く務めてきた連盟の“女帝”と呼ばれた城田憲子氏の対立です。城田氏は荒川静香や安藤美姫を育てた名コーチとして知られますが、伊東委員長に断わりなく教え子のコーチや指導法を決めてしまう。安藤美姫が連盟に冷遇されたのもそうした経緯があった」
羽生とJSFの溝が深まったのは2年前、羽生がコーチを現在のブライアン・オーサー氏に変更したことだった。
「さらに連盟に相談しないまま、練習拠点をオーサー氏のいるカナダに移したことでもJSFの不興を買った。いずれも城田さんのアドバイスだったといわれている。今年3月の世界選手権のキスアンドクライ(選手が採点を待つ席)で羽生が一人ぼっちだったのも、連盟関係者の同席を羽生サイドが断わったからのようです」(同前)
※週刊ポスト2014年11月28日号