約3年ぶりの日中首脳会談に、安倍首相だけでなく、大メディアまで浮かれてしまったようである。翌日(11月11日)の新聞各紙は一面にこう見出しを打った。
〈日中 関係改善へ一歩 3年ぶり首脳会談 海上衝突回避で一致〉(読売)
〈日中 互恵関係を再構築 首脳一致 尖閣・靖国言及なく〉
〈「会談自体が意味」日本ペースに自信〉(産経)
首脳会談での習近平・国家主席の振る舞いはあまりに儀礼に反し、日本の首相をコケにするものだったのに、なぜ会談を評価するのか理解に苦しむ。
会談前から異常な光景だった。本来、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のホスト国である中国側が、相手国の首脳を出迎えるのが外交上の常識だ。しかし、報道陣のカメラの前に先に現われたのは、あろうことか安倍首相だった。安倍氏はひとり、フラッシュの前に居心地悪そうにたたずむしかなかった。その後の様子を、中国ネットニュース『万隆証券網』(11月11日付)はこう伝えた。
〈安倍首相が待っているところに習主席がようやく姿を見せた。安倍首相は笑顔で手を伸ばし、「正式にお会いできてうれしいです」と語りかけた。だが、その言葉が通訳される前に習主席はカメラを構える記者のほうに身をひるがえし、安倍首相には何も語りかけなかった〉
〈安倍首相は挨拶したが、習主席は応えなかった〉
こうして首脳会談は屈辱的なシーンで幕を開けたが、他にも非礼な舞台設定が用意されていた。中国情勢に詳しいジャーナリストの相馬勝氏の指摘は鋭い。
「大国同士の首脳会談であれば長テーブルを挟んで座るのが外交儀礼です。ところが今回の会談では2人が横並びで座った。しかも、向かって右側という優越的な立場の席に習氏が座り、安倍氏は立場の弱い左側の席に着かされました。11月9日に習氏が香港行政長官と面会したときと同じ構図です。
しかも、首脳会談だというのに、現場には日本の国旗さえ用意されていませんでした。あたかも、中国皇帝と朝貢外交を行なっているかのような印象を受けました」
※週刊ポスト2014年11月28日号