消費増税の先送りについて国民の審判を仰ぐという解散・総選挙。解散に「大義」はないが、狙いははっきりしている。安倍政権の失政を隠し、「国民を騙せるうちに選挙をしてしまおう」というのだ。
安倍首相が解散に傾いた大きな要因がスキャンダル隠しである。政治資金疑惑や公選法違反疑惑で大臣を辞任した小渕優子、松島みどりの両氏に続いて、「3人目の辞任」が出れば政権に赤信号が灯ることは間違いない。
しかも、閣内には「辞任予備軍」の疑惑大臣らがウヨウヨいる。中でも真っ黒なのが「口利きメール疑惑」の塩崎恭久・厚労相とファミリー企業を通じた「政治資金私物化疑惑」の西川公也・農水相である。本来はとっくに辞任して当然の問題大臣だ。
口利きメール疑惑は、塩崎氏の地元・愛媛県松山市で、特別養護老人ホームが市から許可が下りず、特養を運営する社会福祉法人の理事長が地元市議を通じて塩崎事務所に相談。秘書が厚労省に「口利き」したもの。
政治資金私物化疑惑は西川氏の政策秘書の息子や親族が社長を務める会社に、「タイヤ代」「お歳暮」などとして計100万円近くを流していた疑惑。安倍側近議員の1人が首相の胸中をこう代弁する。
「これ以上のドミノ辞任となれば政権がもたないから疑惑に目をつぶって庇うしかないが、それにも限界がある。だから総選挙後の組閣で疑惑が出た政務三役を一掃するしかない」
しかし、解散で「疑惑の根」を断てるわけではない。相次ぐスキャンダルの背景にあるのは、野党転落時代の自民党議員たちがカネに困窮して政治資金を私物化し、政権に返り咲いてからは一層、票のために地元への利益誘導に励む金権体質が強まったことだ。仮に内閣のメンバーを入れ替えても、また次々と疑惑が噴出しかねない。新スキャンダルの「種まき解散」になるだけなのだ。
※週刊ポスト2014年11月28日号