安倍晋三首相の解散・総選挙の狙いの中に外交敗北や閣僚のスキャンダル隠しがあることは間違いない。だが、大メディアは解散を煽りながら、裏にある安倍政権の失政を報じない。それは「選挙特需」に目がくらんでいるからだ。
いざ解散・総選挙になると、新聞・テレビに巨額の税金が転がり込む「選挙公営」という仕組みがある。
公職選挙法では、候補者の新聞広告やテレビの政見放送、ポスターや公選ビラの製作費、新聞折り込み料から街宣車のレンタル料まで税金から支給することになっている。
前回2012年の総選挙(候補者1504人)の場合、選挙公営費は総額約260億円。候補者1人あたり1000万円以上となる。
とくにおいしいのが新聞社だ。選挙広告の掲載料(9.6センチ×2段)は、東京都のケースで読売が「219万8028円」、朝日は「160万4400円」などと社によって違い、公選法では小選挙区の候補者1人につき5回の新聞広告、政党も比例代表候補の人数に応じた分量の新聞広告が税金で出せる。
前回の場合、東京ブロック(小選挙区と比例代表)だけで読売には約9億7000万円、朝日が約6億1600万円、日経約1億9100万円、毎日5600万円、産経約2500万円など総額約19億円近くの新聞広告費が税金で支払われた。
これは東京だけの数字であり、全国でみればざっと200億円が新聞社やテレビ局(政見放送)に使われた。候補者数にもよるが、今回もほぼ同額のカネが大メディアに流れ込むことになる。
選挙公営とは別に、政党が独自に出すテレビCMや新聞広告もある。全国紙の全面広告になると1回約5000万円。テレビも「選挙期間中、全国ネットで流れる政党CMは15秒1本で300万円程度」(民放幹部)という。
政党CMなどの広報宣伝費も、原資の大半は政党交付金だからやっぱり税金なのだ。ボロ儲けできるのだから、「大義」があろうとなかろうと、大メディアが解散を喜ぶはずである。
※週刊ポスト2014年11月28日号