中国で行なわれたAPEC会議にて、経済や外交政策で成果を挙げられない安倍晋三首相が泣きついて日中首脳会談で得点稼ぎをしようとした姿も情けないが、それ以上に驚かされたのは、習近平・中国国家主席の外交儀礼を欠く態度だった。
安倍氏は就任直後から習氏との首脳会談を希望してきた。だが、習氏は「安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約すること」、「尖閣諸島に領土紛争があると認めること」などを迫って応じてこなかった。
首脳会談がようやく実現したのは、11月7日に公表された「4つの合意事項」で安倍政権が中国に大幅譲歩したからにほかならない。現代中国が専門の拓殖大学教授でジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
「日本政府は一貫して『尖閣諸島に領土問題は存在しない』という立場を取り続けてきましたが、今回の合意事項では尖閣諸島に領土問題が存在することを事実上、認めてしまった。実際、合意発表後、共産党の機関紙『人民日報』は〈領有権をめぐる問題があることを両国は確認した〉と報じました。
経済政策がうまくいっていない安倍首相は、外交でポイントを稼ごうとしている。しかし、切り札となるはずだった拉致問題で躓いてしまった。その失敗を糊塗するために、日中首脳会談という外交的成果を求めて焦ったのでしょう。その足元を見て習主席は日本をコケにする態度をとったと見ていい」
中国共産党の機関紙である『人民日報』は会談翌日、勝ち誇ったかのようにこう報じた。
〈日本の求めに応じて(習主席は)会談した〉
※週刊ポスト2014年11月28日号