安倍晋三首相が泣きついて日中首脳会談を実施して得点稼ぎをしようとした姿も情けないが、それ以上に驚かされたのは、習近平・中国国家主席の外交儀礼を欠く態度だった。習氏が首脳会談で高圧的な態度を取ったことも、強気の現われというより、そうせざるを得ない苦況からのものといえる。
中国情勢に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が分析する。
「習氏は国内の反日勢力を抑え込むことができておらず、日本に甘い顔を見せたら自分がバッシングを受けかねない。反日勢力の代表格が、尖閣諸島を奪取してでも権益を伸ばしたい人民解放軍です。
彼らは日本と中国が良好な関係になってもらっては困る。その人民解放軍に強い影響力を持つのが、習主席の後見人である江沢民・元国家主席です。江氏への配慮から、習主席は人民解放軍を全面的に掌握できず、反日勢力に権力基盤を握られる状況が続いている」
さらに相馬氏は赤サンゴの密漁と軍の接点にも言及する。
「APECを控えたタイミングで小笠原に漁船団が出没したことを考えると、中国海軍の意向に従った民兵などの反日グループが関与していると考えられます。習主席に反旗を翻す勢力が、尖閣諸島をはじめとする日本側の海域管理の強化に対抗するため、混乱を起こそうと小笠原に密漁船団を投入した可能性がある。
習氏の中国共産党内での基盤が磐石でないため、反日勢力の顔色をうかがわざるを得ない。だから日本に対して強硬姿勢を続けているわけです」
※週刊ポスト2014年11月28日号