中国を代表する3大国営メディアである新華社通信や中国中央テレビ局、党機関紙「人民日報」で、贈収賄などの腐敗事件や「姦通」などの不適切な交際、情実人事、財政管理不備、報道のミスなどの厳重な党規律違反問題が噴出しており、3社合わせて230人以上もの幹部が処分を受けていたことが分かった。
中国のメディアは「中国共産党の喉(のど)」といわれ、党が決めた方針に従って報道するなど、報道内容の統制が重視されており、党内の報道・宣伝担当の総責任者である劉雲山・党政治局常務委員が習近平主席から叱責され、自己批判を強いられた。中国情報で定評がある香港誌「争鳴」が報じた。
この問題は10月中旬に北京で行われた党政治局会議で、党員の不正問題を追及する党中央規律検査委員会第一書記の王岐山・常務委員から提起された。
王氏が報告したところでは、この3大メディアの内部では、
【1】報道に当たって政治意識、責任意識が低く、党の指示に従わない報道を行なう
【2】幹部人事を決める際、賄賂の額が多い者から幹部に登用するなどの情実人事が横行している
【3】出張経費などの水増し経費が多く、予算が正しく使われていない
【4】組織内の男女関係が乱れており、「姦通」問題が多く発生している
【5】昼間から飲酒し、麻雀に耽るなどの生活上の問題が多々見られる
などとなっている。
このため、党内内部問題を処理する党中央書記処と規律検査委が合同で調査したところ、多数の党規律違反問題が摘発され、幹部が処分された。
その内訳は、人民日報では停職・解雇処分が52人、腐敗問題などで立件・起訴が9人。新華社では77人が停職・解雇処分、11人が立件・起訴、このほか7人の支社長・副社長が逮捕。中国中央テレビ局では停職・解雇処分が57人、立件・起訴は10人、さらに副局長級の幹部10人が逮捕されている。
中国で、特にこの3大メディアは影響力が強いが、腐敗問題などで組織が内部から浸食、変化し、党の指示を無視されていることが分かり、習近平指導部は強い危機感を抱いているという。
とりわけ、習近平指導部は報道内容などの面で、メディアの統制を厳しくしており、そのなかでの3大メディアの規律の緩みが明るみに出たことで、王岐山氏が同じ常務委員の劉雲山氏の監督責任を厳しく追及。習近平氏も「今後、このようなことがないように、劉同志が責任をもって、メディアの内部体質を改善させることが必要だ」と叱責した。
党総書記の習氏が政治局会議という党の最高決定機関で常務委員を批判するのは極めて異例。それだけに、3大メディアを筆頭に中国のメディアのたがが、かなり緩んでいるのは間違いないところだ。