10月8日に、13年ぶりとなるオリジナルアルバム『去華就実』をリリースした海援隊。11月9日には、福島県田村市文化センターで『海援隊トーク&ライブ2014』を行なった。
当日午前10時東京発の東北新幹線で郡山駅に降り立ち、そこから車で40分。昼食をとり、1時間の昼寝タイム後に始まったリハーサルは、一曲、一曲、確かめるように進んでいく。ボーカル・武田鉄矢(65)が語る。
「この会場のキャパは800人。武道館に比べたら随分小さいけれど、どんなに小さな会場でも、僕らは呼んでいただけたらどこにでも行く。テレビでも同じで、懐かしのフォーク特集でもなんでも、聴いてくれる人が喜んでくれるならそこで歌う。でもね──」
ここまで話したところで、武田のハーモニカを持つ手がかすかに震えた。
「心の真ん中には、思い出になってたまるか! というのがあるんですよ」
リードギターの千葉和臣(62)とリズムギターを担当する中牟田俊男(65)。3人のクルーで船出した海援隊は、チューリップや井上陽水、甲斐バンドなどビッグアーティストを輩出した博多のライブハウス『照和』で、泉谷しげるに見出され1972年にデビュー。桜田淳子、山口百恵が相次いでデビューした翌1973年の暮れに、『母に捧げるバラード』を発表し、100万枚を超えるセールスを記録した。
「当時はビートルズを語るやつがいっぱいいて、僕もわかったふりをしていたけど、本当はどこがいいのかさっぱりわからなくてね(笑い)。それより、歌の中に語りや演劇性を投げ込んだ三波春夫が大好きだったんです。あれをフォークでやったらどうなるんだろうって、考えただけでわくわくしてきちゃって。ただ、それを面白いっていってくれたのは、千葉と中牟田だけだったんですけどね」