現在日本には77の刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)があり、収容されているのは男性が約6万人、女性は約5000人だ。
女性受刑者はその中の10の刑務所に服役している。岐阜県笠松町にある笠松刑務所は、女子施設としては唯一の公サ法(公共サービス改革法)運営施設となる。公サ法とは、国や地方公共団体が提供する公共サービスを見直し、サービスに民間事業者の創意・工夫が反映されることを期待して官民または民間の競争入札を導入するための基本理念や必要事項を定めた法律のこと。
総務部長が概要を説明する。
「2010年から施設運営に民間事業者のノウハウを導入。総務や警備の一部を業務委託し、教育プログラムや職業フォーラムなどにも取り入れています。職業訓練もそのひとつで、例えばクリーニングを民間委託するのと同時にクリーニング師の免許取得を目指す『クリーニング科』が設置されました。当所では9つあるうち5つの科が、民間による訓練となっています」
他には、「調理科」「コールセンター科」「DIY(快適な生活空間を生み出すために自分の手で何かを作ったり修繕したりすること)科」などがあり、とりわけ目を引くのが3年前に開設された「ネイリスト科」。なんと、服役しながらジェルネイルの技能が習得できるのだ。3か月間で、「INAジェルネイル検定3級」の取得を目指す。
今春にネイリストの資格を取得したA子さん(37才)は覚せい剤で4度目となる刑務所暮らし。初犯は24才のときだった。
「16才のときに結婚した旦那が覚せい剤を使用していて、『気持ちを共有したい』という興味本位で手を出してしまった。その後も、つきあう男性の影響で何度も手を出しました。クスリの人間関係はなかなか切れない。いけないとは思っても、近づくと体が要求して、意志が弱いからまたやってしまうんです。
これまでは風俗や水商売を転々とする人生でしたが、そろそろ昼の仕事をしたかった。資格が得られたことで自信につながり、出所後の生活の担保が得られるようになりました」
取材当日は息子の誕生日。最近は、「口をきいてくれない」と悲しげに話した。
「3回目まではなんとか受け入れてくれましたが、成人した今息子はすごく怒っています。手紙を書いても返事はずっとありません。ここで覚せい剤を断ち切れなかったら、息子との縁も切れると思う。面会にくるたび泣く老いた両親のためにも普通の生活を取り戻したい」(A子さん)
資格取得のために心を入れ替えたことが息子に伝わったのか資格試験前には、「お母さん、がんばってね」と老親を通じて励ましが届いた。
いつの日か、息子の恋人やお嫁さんにネイルをするのが夢だ。
※女性セブン2014年12月4日号