自民党はさる11月15~16日に重点選挙区の情勢について独自の世論調査を行なった。幹部たちは結果に色を失ったという。
「自民党支持層を固め切れていない。逆風を止められなければ、短期決戦でもわが党は40~50議席ぐらい減らす可能性があると党執行部は青くなってきた」(自民党選対幹部)
また、自民党の屋台骨を支えているのは、全国約1200人の都道府県議をはじめ、市町村議など系列の地方議員たちだ。自民党代議士は系列議員の後援会組織を利用して選挙を戦い、とくに自前の後援会が手薄な新人議員は地方議員におんぶにだっこという実情がある。
その地方議員は来年4月の統一地方選(全国44の県議会をはじめ、300以上の市町村議会が改選)を控えて自分たちの選挙で頭がいっぱい。そこに総選挙をぶつけられたことで怒り心頭に発している。応援をサボタージュする動きも出ている。
安倍自民にとってもうひとつの大きな誤算は、無理と踏んでいた野党の候補者調整が進む可能性が出ていることである。
解散表明前、2大野党の公認内定者は民主党と維新の党を合わせても295小選挙区の6割程度しか埋まっていなかった。加えて自民党の選対幹部は、「維新の党の橋下徹・共同代表は大の労組嫌い。労組が基盤の民主党と選挙協力できるはずがない」と楽観視していた。
しかし、いざ解散となると、野党が無理な競合を避けて一本化に動き出した。背後で動いていたのは、小沢一郎・生活の党代表だ。
小沢氏は11月17日の会見で「民主・維新が今のままでは、前回のように(議席が)取れない。新しい政党を作って選挙に臨まないと、完全な統一戦線にはならない。その気になれば難しいことではない」と新党構想をぶちあげた。自民党は「荒唐無稽」(選対幹部)と受け止めているようだが、これまでに数々の政界再編を手がけてきた小沢氏はすでに水面下で民・維を中心とする野党共闘づくりに動いていた。
元BS11報道局長で政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が語る。
「小沢氏はここぞというときには隠密行動で仕掛ける。最近も、維新の橋下共同代表や政敵の間柄と見られている民主党の前原誠司・元代表と会談して非自民勢力結集の必要性を説いたという情報がある。
リアリストの小沢氏は新党がすぐには無理でも、民主と維新が中心になって全国に野党統一候補を立てることで自民党と互角に戦う体制をつくることが重要と分析しており、非自民勢力結集を自分の最後の仕事と考えているのではないか」
生活の党はまず小沢氏の地盤である岩手の1区と3区に候補者を立てないことを決めて民主党候補に一本化し、岩手の選挙情勢を「野党連合」優位に傾けた。
※週刊ポスト2014年12月5日号