知的財産権無視の姿勢が強く批判される中国のパクリ遊園地。ジャーナリスト・西谷格氏が中国の最新型遊園地、山東省煙台市蓬莱にある「欧楽堡夢幻世界(英語名・ユーロパーク)」に“キャスト”として潜入した。面接は5分程度で終了、2~3日の試用期間で様子を見て、本採用なら月給は1500元(約2.7万円)という条件だった。
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翌日、朝8時に出勤すると「演芸部」というパレードやダンスを担当する部署に配属された。コンクリート打ちっぱなしのスタッフの控え室には王子様やお姫様のような派手な衣装がハンガーに掛けられていた。手持ち無沙汰なので控え室を物色していると、無造作に7人の小人の頭部が床の上に転がっているのを発見。ネットで見たのはこれに違いない。
よく見ると、洗浄が不十分で全体的に黒ずみ、目つきが何となくホンモノと違う。口元は笑顔でも目が笑っておらず、可愛らしさが決定的に欠けているのだ。試しにかぶらせてもらったが、汗の染みこんだ剣道の防具のような臭気に満ちていた。
しばらくすると、演芸部の女性部長(40代)から「倉庫に荷物を運んでほしい」と用事を申しつけられた。倉庫に行くと、怪しい目つきのミッキーマウスとミニーマウス、ドナルドダックといったメジャーなディズニーのかぶり物が鎮座していた。
これらも使われるのだろうか、と女性部長に聞くと、「今は客が少ないから使ってないのよ」とのこと。では、客が多い時は使うのか? と問うと、「いや、そういうわけでもない……」と言葉を濁された。いずれにせよ、現在では使用中止となっているのだ。別の女性スタッフにミッキーマウスやミニーマウスのかぶり物のことを聞くと、
「現場判断で開園直後は使っていたが、それを知った上層部から使うなと言われた。ミッキーマウスやドナルドダックは著作権があるから、使ったらマズイのよ」
かといって7人の小人ならよいのか?
「小人は大丈夫。あれに著作権はないから」
と言い切られた。『白雪姫』の物語自体には西遊記や桃太郎などと同様に著作権がないのは確かだが、ディズニーのキャラを使っているのであれば、別途商標権の問題があると思うのだが。7人の小人がディズニーの中で、ミッキーマウスやドナルドダックに比べて知名度が低いことも、そうした勘違いをさせている理由かもしれない。(続く)
※SAPIO2014年12月号