中国の汚職事件は、呆れるしかないほどのスケールであることが少なくない。同地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
APECで華々しい外交成果を誇示し、経済大国としてのアピールに成功したかに見える中国だが、国内が難問三山積状態であることに変わりはない。なかでも国民が最も強い不満を抱いているのが、格差であり、同時にその最大の受益者と思われる官僚たちの汚職である。
習近平政権下で進められる反は腐敗キャンペーンにより官僚たちの委縮が伝えられる一方で、長年の蓄財の膿はまだまだ吐き出され切ってはいない現実が垣間見える報道も続いている。
2014年10月31日、最高人民検察院が定期に行う記者会見で、同院反貪賄賂総局の徐進輝局長が明らかにした汚職摘発事件は、まさにその典型だった。
徐局長は、検察が手掛けたある汚職事件の結果を公表したのだが、捜査の対象となったのは国家発展改革委員会(=発改委)。中国でマクロコントロールを中心に経済政策の根幹を担う組織で、大型の公共事業はすべてこの発改委が批准する。言い換えれば発改委の同意なくては一つの国家規模のプロジェクトさえ動かすことはできない。もちろん受け取る賄賂の額は、ただでてさえ高額な経済官庁にあって、また桁が一つ違うといわれてきた。
その発改委はある意味中国における聖域でもあったのだが、習近平政権下ではその神通力にも翳りが顕著だ。
当日、徐局長は長期に亘って調べを進めていた発改委をめぐる汚職事件が弾けたことを明らかにした上で、このうち収賄額が1000万元(約1億7000万円)を超えた者が6人含まれていたことを公表したのだ。
中国ネットの記事によれば、収賄額が1000万元を超えた幹部のうちの一人は、なんと自宅に2億元(約34億円)を超える現金を隠し持っていたというのだ。34億円といえば100万円の束が3400個にもなるボリュームだ。
「賄賂を隠し持っていたのは、発改委の石炭課の副課長で魏鵬遠という人物です。彼はいろんなメディアの取材を受けて、石炭の重要性と開発の推進を訴えかけていましたから、業界の有名人でした。環境対策の意味でも不人気の石炭ですが、彼は賄賂をもらった分、頑張って石炭業界を後押ししていたのですね」(北京の夕刊紙記者)
腐敗官僚取締りの現場では、彼らの自宅などから見つかる現金が膨大なため銀行から借りた現金カウントマシーンが何台も故障してしまったという笑い話が伝わってくるほどだという。