初入幕の9月場所は話題を独占した(13勝2敗)逸ノ城だが、九州場所は苦戦が続いた。
逸ノ城が5勝5敗となった10日目に北の湖理事長を直撃すると、「先場所よりは対戦相手も上位ばかりになるし、このくらいで当然。壁にぶつかっているというか、五分の星ならよくやっているほうじゃないか」と語っていたが、そう単純な話ではない。問題は今場所の取組表である。ある親方は首を傾げる。
「通常、関脇は前半戦で前頭上位の力士と対戦し、中日から横綱や大関とぶつかるのが慣例です。そのため前半は白星が先行するが、力のない関脇は後半に負けが込んで陥落することになる。
ところが今場所の逸ノ城は上位、下位、上位、下位と交互に当てていく異例のパターンだった。連敗は力士にとって精神的打撃が大きいが、逆に連敗さえしなければ大崩れはしない。上位と下位を交互に当てて連敗を避け、なんとか勝ち越させようという意図があったのではないか」
果たして逸ノ城の成績は白星と黒星がほぼ交互に並び、終盤戦まで五分の星をキープ、結果的には8勝7敗とかろうじて勝ち越した。
初日の相手が横綱・日馬富士であったことについても、「先場所に右目周辺を骨折し、今場所は休場が噂されたほど体調が不安だった相手ですから、初日に当てれば逸ノ城に勝機があると踏んだのではないか」(若手親方のひとり)とみる声がある。
※週刊ポスト2014年12月5日号