12月17日に発表された今年7~9月のGDP速報値は年率換算マイナス1.6%で、4月の消費税率引き上げ以来、2期連続で大幅に落ち込んだ。
政府のGDP速報値を分析すると、「アベノ不況」は日増しに色濃くなっている。自動車、家電から旅行、外食まで個人消費がガクンと冷え込み、住宅投資も2期連続マイナス。この10月の首都圏マンション販売戸数は前年同月比で11%も減った。実質賃金が15か月連続で減り続けているのだから消費に回す余裕などあるはずもない。
ここまで日本経済を悪化させた原因は2つある。1つはアベノミクスによる円安の進行と物価上昇だ。一部の輸出大企業を除いて、円安で内需企業や中小企業の業績は悪化し、社員の給料が減っているのに、物価が上がれば生活が苦しくなるのは当然の結果である。
そこに2つめの「消費増税」が追い討ちをかけた。本誌は消費税率を上げれば経済は悪化すると繰り返し指摘してきた。景気回復させるには減税すべきというのが経済学の基本であり、増税して景気が良くなった国などないことは世界の常識だ。また、景気が回復すれば税収が増え、財政再建も成る。しかし安倍晋三首相は「経済の再生と財政健全化を同時に達成する他に私たちには道はない」と増税を断行し、日本経済を負のスパイラルに突き落としてしまった。
過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ。安倍首相がいまやるべきは総選挙ではなく、政策の誤りを直視することだろう。その政策転換を国民に問うための総選挙なら国民にも意味はある。が、“俺が正しいことを証明する審判”というのでは、選挙費用の血税700億円は捨てられるも同然だ。
この総選挙は、党利党略どころか、安倍首相の安倍首相による安倍首相の面子のための解散だ。国民生活など最初から眼中にない。
※週刊ポスト2014年12月5日号