来年1月のアジア杯前の最後戦となる11月18日の豪州戦で白星を飾ったサッカー日本代表だが、「アジア王者の貫禄」は全く示せなかった。
0-0のまま折り返した後半16分に今野泰幸、同23分に岡崎慎司が得点したが、試合終了間際に1点を返される相変わらずの試合運び。本田圭佑、乾貴士は再三シュートを放つも枠を外し、10番を背負う香川真司はまたしても存在感を発揮しきれなかった。
しかし、選手以上にファンを失望させたのは采配だった。
「アギーレ監督は就任後一貫して4-3-3のシステムで戦ってきた。しかし、この試合は前半途中から4-2-3-1に変更しました。これはザッケローニが使っていたシステムですから、目を疑いましたよ」(サッカージャーナリスト・渡辺達也氏)
たしかにアギーレ監督は就任会見で「4-3-3を基本に考えているが、5-2-3や3-4-3になることもある」と状況に応じたシステム変更も示唆していたが、よりによって前監督の戦術を踏襲したことはサッカーファンを驚かせた。
先発メンバーも武藤嘉紀、太田宏介を除く9人がブラジルW杯組。まさに“ザックの遺産”を使ってなりふり構わず勝利を目指した結果だった。
9月5日の初陣以降、アギーレ監督は迷走を続けている。
「『将来性のある選手を呼びたい』と当初は若手を積極的に起用したが、使えるメドが立ったのは武藤と柴崎岳だけ。
10月のブラジル戦では本田や長友佑都を先発から外して若手中心のメンバーで臨んだが、11月14日のホンジュラス戦から34歳の遠藤保仁や31歳の今野を招集し、使うのもベテランばかりになった。4年後のロシアW杯を見据えた起用とは思えません」(同前)
目先の勝利に執着し始めたのは理由があるという。スポーツ紙記者の話。
「ブラジル戦後、アジア杯で優勝を逃せば監督が更迭されるという噂が記者の間で広がりました。それで焦って、結果を最優先しているといわれています」
日本代表監督は年俸2億円超が約束されW杯出場のハードルも低い“おいしいポスト”。その椅子を守るための変節と見られても仕方ない。アギーレの賞味期限切れも近い?
※週刊ポスト2014年12月5日号