改革派として知られる胡耀邦・元中国共産党総書記の長男、胡徳平氏が改革的な論調で定評がある中国の月刊誌「炎黄春秋」を出版する会社の社長に就任することが分かった。現在の杜導正・社長は91歳と高齢であることに加え、その改革派志向の強い記事が当局の検閲に引っ掛かるなど問題視され、廃刊の危機を迎えているためだ。
そこで元総書記の威光をバックに、胡徳平氏の登場となったという。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」が伝えた。
同誌は昨年の新年号で、「憲法は政治体制改革と同義」という論文を掲載し、憲法を重視すれば、政治体制改革を実行しなければならなくなると強調し、現在の中国共産党の一党独裁体制では政治体制改革はできず、憲法を重視しなければ、中国が現在抱えているさまざまな矛盾も解決できないと主張した。
これが当局の逆鱗に触れ、編集部のメンバーが一時、取り調べを受けるなどの圧力を受けた。
また、中国ではタブーとなっている趙紫陽・元総書記の政治活動や業績、その民主的な考え方を称える論文を発表するなど、物議を醸してきた。このため、廃刊は免れないとの情報藻飛び交ったが、同誌の後援者として、改革派よりの党長老がついていることから、結果的に廃刊にはならなかった。
しかし、1989年6月に起きた天安門事件20周年を前にした2009年5月、同誌のホームページが一時閉鎖されるなど、当局の圧力が厳しくなってきた。
杜社長は自身が高齢であることも考慮して、今年限りで引退し、雑誌も廃刊にするとの意向を固めていたが、旧知の胡徳平氏が新社長を務めることを快諾したことで、一転して継続が決まったという。
胡徳平氏は父の胡耀邦氏と同様、政治改革に積極的な姿勢を示すなど極めてリベラルな思考の持ち主といわれ、胡耀邦氏の病死がきっかけとなって起きた天安門事件の再評価に執念を燃やしていると伝えられる。
また、習近平・国家主席の父親の習仲勲氏と胡耀邦氏は信頼関係が厚く、習近平氏と胡徳平氏も関係が良好といわれるだけに、北京の知識人の間では「胡徳平氏が炎黄春秋の社長に就任することで、習近平主席にも影響力を及ぼして、少しでも民主的な改革が進むのではないか」との期待の声も高まっている。