現在、路上生活者は約7500人、そのうち女性は3.5%という統計を厚生労働省が発表している。そんな路上生活女性の一人、四国地方の家を飛び出して3年前に大阪・天王寺にたどり着いた吉田正子さん(仮名・48才)は、家に夫と2人の子供を残してきた。
「私はもともと大阪の出身です。結婚して夫の実家がある四国へ移りましたが地方での田舎暮らしがストレスになった。常に見張られているような隣近所とのつきあいがしんどかったのです。夫はそれを理解してくれなかった。耐えきれなくて出てきてしまいました」(正子さん、以下「」内同)
大阪に出てきたものの、正子さんの実家は生活保護を受給しており、とても頼れるような状況ではなかった。家を出てきた時は、ほとんど着の身着のままで、その日の宿にも食事にもありつけない。
「どうしていいかわからなくて立ち尽くしていると、男性が声をかけてきました。『なんぼや? 5000円か?』と。一文無しの私はその言葉に反応してしまったのです。それでホテルに泊まって。5000円で体を売ってしまいました…。地方の専業主婦だった私が信じられないことですが、体を売って生活するようになったのです。家にバレたくないので、役所などに相談に行くことは考えませんでした」
しかし、いつも客が取れるとは限らない。正子さんは、寒さをしのぐためにファストフード店に入り100円のコーヒー1杯で夜を明かしたり、アパートの階段下で雨から身を守ったという。他の客やアパートに出入りする住民の視線を気にし続け心が安まることはなかった。そんな生活をしているうちに正子さんは婦人科系の病を患い、路上で倒れた。路上生活者を支援するNPOが倒れた正子さんを発見し119番通報。救急搬送され、生活保護につなげてもらったのだという。
「女性の路上生活には危険が伴う」と指摘するのは『生きさせろ!難民化する若者たち』(ちくま文庫)などの著書がある作家の雨宮処凛さんだ。
「これまで何人ものホームレスの女性に会いました。20代の若い子から、70代の高齢者までさまざまです。若い人は親から虐待を受けるので家にいられなくなったケースが多い。そうして実家を出て、住み込みの風俗で働く。しかし、仕事がイヤになったり、うつになって働けなくなったりしてネットカフェなどに流れてしまうんです。
路上生活をする女性もいますが、やはり危険。襲われそうになって怖い思いをしたという女性もいました。なかには同じ路上生活者の男性とつきあって一緒に生活をするという女性もいます。とはいえ、女性のホームレスの場合、体への負担が大きい。支援団体やシェルターなど保護施設は今増えていますし、住所がなくても生活保護を申請することはできるので、そういうところに助けを求めてほしいと思います」
冬本番が近づき、これからますます寒風は吹きすさぶだろう。その寒空の下、「寝る場所がない」「食べる物がない」と街を彷徨う女性がひとりでも少なくなる対策が求められている。
※女性セブン2014年12月11日号