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静かに心と体冷えていく感覚に襲われる漫画『グッドナイト』

【マンガ紹介】『グッドナイト(1)』南Q太/祥伝社フィールコミックス/972円

 私たちはなぜ、マンガを読むのだろう…。このマンガを読みながらそんなことを考えました。トイレに座りたばこをふかす、疲れ切った中年女の顔から物語は始まります。痴呆が進み、自分に頼り切りな姑の世話を1人で黙々と続ける、嫁の晴子です。

 夫は長い間不在の家。かつて嫁である自分を怒鳴りつけ、暴君のようにふるまった姑の面影はもうない。だからといって晴子は許したわけではない。許せるわけがないのだ。なぜなら姑は、子供のできない義姉に渡すために、晴子の産んだ娘を取り上げたのだから--。

〈料理に変なもの入れてないだろうね/毒とか〉とさらっと言うなど、いわゆる「嫁姑バトルもの」なはずなのですが、その描写には温度というものが感じられません。当初は抵抗していた晴子の気力がすり減っていくのと比例して、読んでいくうちに静かに心と体が冷えていくような感覚に襲われます。

 つまり、1巻を読む限り、「楽しい」と思う瞬間が一度も訪れないのです。同じように姑に苦しんでいる人が読めば、「共感」というはっきりとした感情が読む推進力になるでしょう。

 そうではない私が読むのをやめられないのは…この作品がエンタテイメントとしてきっちり成立しているから。楽しませる、泣かせる、怖がらせる、と同じように「静かに心と体を冷やす」。それもマンガの持つエンタテイメント性のひとつなのかもしれません。

(文/門倉紫麻)

※女性セブン2014年12月11日号

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