中国共産党の幹部人事を掌握する党中央組織部はこのほど、地方政府に対し「指導幹部の出国(出境)の管理・監督を一歩強化する措置に関する通知」を通達した。この通知の内容をひとことで言うと、「地方政府は幹部の出国について、公務だろうが、プライベートだろうが、しっかりと把握しなければならない」ということだ。
これを受けて、北京市政府は部長以上の幹部に対して、公務以外の出国を原則的に認めない措置を決定。市政府が幹部のパスポートを預かり、公務出張の際、幹部に渡されるという。
それでは、個人旅行は絶対に許可しないかというと、そうでもないらしいが、かなりの煩雑な手続が必要だ。行き先や宿泊先のホテルや連絡先、一緒に行く人、現地で会う人、その目的などについて細かく申請しなければならない。
北京紙「新京報」によると、手続の煩雑さゆえに、ほとんどの幹部が海外旅行から国内旅行に切り替えているという。
これは、習近平指導部の反腐敗キャンペーンに関連したもので、幹部が公金を持ち逃げして、海外に住む妻や子女、親族の元に駆け込むケースをなくすのが目的だ。いわゆる「裸官」問題だ。
広東省では今年2月時点で、裸官は2190人にも達し、そのうち局長級幹部は9人、部長級は124人にも上っている。また、中国全体で海外に逃亡した裸官はこれまで4000人以上で、持ち逃げした公金は推計で総額530億ドル(約5兆5000億円)と天文学的な数字に達している。
すでに、北京市政府ばかりでなく、広東省でもいくつかの市政府が幹部の海外旅行禁止措置を打ち出すなど、全国の各都市に波及している。