これまで、外国人力士が大相撲で親方になる場合は、日本国籍を取得してからで例外はない。元関脇・高見山や元横綱・武蔵丸は日本へ帰化し年寄を襲名して親方となっている。そして白鵬は日本人女性と結婚し、引退後は親方になりたいとの意向を明言してきた。日本人の心を大切にする白鵬ならば、これまでの事例からも「日本帰化」が既定路線と思われてきた。
ところが最近では、白鵬は「モンゴル人のまま親方になる」ことにこだわるようになっているのだという。この心境の変化には周囲も首を傾げている。後援会幹部で湘南信用金庫元会長の服部眞司氏は、「白鵬は変わってしまった」と嘆く。
「最近は懸賞金の受け取り方が雑で横綱の品格に欠ける。完全に土俵を割った力士にダメ押しする取組内容もいただけない。心配しています」(服部氏)
今場所8日目、同じモンゴル人の前頭・照ノ富士との一番で、土俵下に降りた照ノ富士の背中をさらに強く押して「ダメ押し」をし、危うく近くの観客女性にぶつかりそうになった。
服部氏とともに白鵬を可愛がってきた有力タニマチの1人、土佐清水病院院長の丹羽耕三氏はこう語る。
「大鵬の記録に並んで、自分が一番強いと少し天狗になっているところもあるのだろう。その一方で、偉大すぎて誰も助言できなくなっていることも彼の不幸なんだ。今では師匠の宮城野親方(元前頭・竹葉山)のいうこともあまり聞かないと聞く。確かに元前頭の親方ではコントロールできないレベルになってしまった」
白鵬の心変わりの理由として、周囲の「雑音」の影響を指摘する声は多い。
「きっかけは今夏場所千秋楽での日馬富士との結びの一番。白鵬が負ければ星1つの差で並ぶ稀勢の里に優勝の可能性が出るため、ファンから日馬富士コールが沸き起こった。昨年の九州場所で稀勢の里に敗れた時もファンから万歳コールを浴びせられている。目に余る日本人からの露骨な“差別”に相当気落ちしたようです」(相撲担当記者)
関係が良好だった報道陣との不協和音も聞こえる。
「今夏には後援会に公表する前に、夫人の懐妊がスポーツ紙に報じられたことがあった。白鵬からすれば承服しかねる行き違いが重なった結果、囲み取材でも記者を睨み付けて質問を打ち切るようになった。それを快く思わず、取材後に舌を出す記者もいるなど、ピリピリした空気が漂っている」(前出の記者)
応援してくれていると思っていた日本人のファン、信頼していた記者の“裏切り”に遭ったことが、白鵬の心を閉ざしたのか。
※週刊ポスト2014年12月12日号