星霜(せいそう)を重ねた人生の大先輩は、若い世代の手本である。しかし我が国では最近、公共交通機関やコンビニ等でエラそうにする高齢者が眉をひそめられる例が増えている。病院でも我が物顔に振る舞う高齢者は少なくない。20代の看護師がいう。
「待合室のエアコンの設定温度を勝手に変更するお年寄りが多くて困っているんです。高齢になると体温の調節機能が落ちてきますから暑がりの人もいれば、寒がりの人もいる。温度は病院側が設定するから重ね着や薄着で対応してほしいと張り紙をしてあるのに、勝手にリモコンを操作してしまうんですよ」
そのような「周りを気にせず我が道をゆく」タイプの高齢者がなぜ増えたのか。社会学者で甲南大学准教授の阿部真大氏は「個人の性格だけではなく、社会の変化が背景にある」と、こう分析する。
「マイペースな行動をするシニアが増えた背景として、『世間体』を気にしなくていい世の中になりつつあるということがあると考えられます。
かつて祖父・祖母から孫までが一つ屋根の下で暮らしていた時代は、『子供が見ているから、しっかりしたおじいちゃん、おばあちゃんでいなくてはならない』という意識を強く持っていた。子供が世間に迷惑をかけるようなことをしたら、叱るのは祖父母の役目でもあった。公園や道路で近所の子供が悪さをしていたら『やめなさい』と諭すのも地域の高齢者だった。
しかし、核家族化が進み地域のつながりが希薄になった今は、そういった意識を持たなくても良くなった。社会的背景が、『周囲が見えない』『配慮ができない』シニアを作ってしまった面がある」
※週刊ポスト2014年12月12日号