宗教団体の政治的影響力において、自民党と連立与党を組む公明党の支持母体、創価学会が突出していることに異論はないだろう。本誌は新宗教団体に集団的自衛権、靖国神社参拝、河野談話見直し等についてアンケートを行なったが、創価学会が本誌のアンケートに回答したのは、奇しくも安倍晋三首相が解散を表明する前日のことだった。目を見張るのは、創価学会の回答が、まるで安倍首相の考えと違うことだった。
まず安倍政権が安全保障の最重要課題とみなす集団的自衛権の行使について創価学会は、「他国防衛それ自体を目的としたいわゆる集団的自衛権の行使には反対です」と断言する。また、安倍首相がこだわる靖国神社参拝についても、「憲法20条の政教分離原則に抵触する恐れがある点、また近隣諸国への配慮という観点からも反対です」と手厳しい。
さらにいわゆる従軍慰安婦問題については、「事実に基づき、被害に遭われた方々の心情に寄り添った対応を望みます。(河野談話の)見直しの必要はありません」、原発再稼働についても「二度と事故を起こしてはならない。したがって安全性に疑問があれば、再稼働には反対です」とあり、安倍首相の政治理念や意向とはかなりの“ずれ“を感じる。
そして解散の決め手となった消費増税についても、「消費税には逆累進性があり、生活必需品への税負担が増えて日常生活に困窮する方が出るような事態への対策は必要だと考えます」と、政権に配慮しながらも学会の「明確な意思」が窺える回答となっている。
政局の時期に入ったいま、安倍政権の重要課題について、多くの項目ではっきりと学会が「NO」を表明した意味は、非常に大きい。政治評論家の浅川博忠氏が解説する。
「創価学会の教えには、『平和実現』と『弱者の味方』という柱があるため、安倍政権とは相容れない政策が多い。一方、公称827万世帯を抱える創価学会は、公明党に投票するだけでなく『F票』(フレンド票)と言われる信者の知り合いからも票を得られるため、自民党としても学会票がなくてはもはや選挙が戦えません。それだけに、公明党から政策の修正や妥協を求められたら政権としても応じざるを得ない。それこそが学会の集票力の凄まじさです」
一方で、連立与党に入り現実路線の考え方になりつつある公明党が学会への説得に苦しむ場面も増えている。
「学会員のなかには『すぐ自民に折れる』『もっとブレーキ役にならなくてはダメだ』と公明党への不満が高まっている。とくに婦人部は国会議員が偉いなどと思っていないから、遠慮することもない」(学会関係者)
※SAPIO2015年1月号