2010年2月の電撃引退から早5年。元横綱・朝青龍ことドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ氏(34)は現在、モンゴルの首都ウランバートルで実業家としての日々を暮らしていた。ノンフィクションライター柳川悠二氏が近況について現地独占インタビューした。
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モンゴルの首都・ウランバートルの中心部に元横綱・朝青龍の経営するサーカス場はある。11月のある日、朝青龍はエントランス部分にオープン予定のドイツ料理店に、ビジネスパートナーの中国人、隣国カザフスタンの大統領親族らを招き、ささやかなパーティーを開いていた。
挨拶に立つ朝青龍の左手のグラスにはミネラルウォーターが注がれていた。本格ビール工房を備え、約4億円を投資した事業の祝いの席だというのに、会が終わるまで彼は一滴もアルコールを口にしなかった。横綱時代の、傍若無人ぶりは消えていた。
インタビューは翌日、彼のオフィスで行った。
──禁酒はいつからですか。
「ちょうど1年になる。日本から帰ってきてもうすぐ5年だけど、悔しい気持ちを落ち着けるのに、こんなにも時間がかかるのかと思ったね。22歳から角界で横綱をはり、その間は美味しいものを食べて、贅沢した。切り替えは難しかったよ」
──相撲界に、今も未練がある言葉に聞こえますよ。
「力がなくなったから、引退となったわけではないでしょ? 『引退』の二文字を無理矢理言わされた。それしか道は残されていないと。引退なんて、考えてもいなかった。昨日の笑顔が今日の悲しみになった。交通事故みたいなもの。気持ちは、一度死んだ」
引退のきっかけは、2010年1月に起きた泥酔騒動(※注)だった。朝青龍は、問題の責任を取る形で角界を去る。ところがモンゴルへ帰国後も、飲酒運転で拘留されたとか、ナイフで人を刺して海外逃亡したとか……日本にはそんなニュースばかりが伝わってきている。
【※注/2010年、1月場所の7日目に泥酔し、知人男性に怪我を負わせたことから、横綱審議委員会から引退勧告をうけ、引退に追い込まれた】