セルフサービスや立ち食いスタイルで、外食産業の一大勢力となっている低価格そば・うどんチェーン。市場調査会社の富士経済調べによれば、その市場規模は約2397億円(2014年見込み)にも及んでいる。
中でも、店舗数と売り上げ規模で他チェーンを圧倒しているのが、「丸亀製麺(運営:トリドール)」と「はなまるうどん(はなまる)」の“うどん2強”だ。
先に市場を制したのは、はなまる。2000年代に入り、讃岐うどんの全国的な人気にも乗って店舗数を増やしていく。2003年には150店を超えたが、その後ブームは収束。2006年には牛丼チェーン「吉野家」の連結子会社となった。現在、330店で約230億円(2014年2月時点)の規模を誇る。
一方、店内で製麺する「手作り」「できたて」の魅力を前面に押し出し、はなまるのシェアを奪ってきたのが丸亀だ。
国内1000店達成を目標に毎年100店舗以上のスピード出店を果たし、気が付けば781店舗。売上高も708億5000万円(2014年3月期/丸亀製麺のみ)まで伸び、うどん専門店としては驚異的な拡大を図る。
だが、ここにきて丸亀の勢いが止まりつつある。
体育会系タレントの武井壮を起用した新商品の「肉盛りうどん」や「タル鶏ぶっかけ」などが人気メニューとなっているものの、既存店の売り上げは苦戦ぎみ。増え続けていた店舗数も年間計画で21店舗にとどまっている。
その理由について同社は、<カニバリ(共食い減少)が起きているため、不採算店の閉鎖やコーヒー店(コナズ珈琲)など他業態に転換しているため>と説明しているが、外食ジャーナリストの中村芳平氏は、「1000店の壁を超えるのは、そう簡単なことではない」と話す。
「1000店体制ともなれば店のオペレーションを維持するのが大変になるうえ、人手不足の問題も出てくるでしょう。居酒屋の庄屋グループだって800店ほどで落ちましたし、マクドナルドやサイゼリヤも1000店を超えるまでには頭打ちの苦境を味わっているのです」(中村氏)
さらに、中村氏は「丸亀は以前ほど差別化が利かなくなってきたのではないか」と見ている。
「いま、はなまるは冷凍うどんを使って素早く提供する小型店『はなまる屋』を大阪にオープンさせるなど、新たな業態開発にも積極的に取り組んでいます。
冷凍麺といっても、うどんのコシや味に改良が加えられて生麺と変わらぬ品質を出せるレベルになってきましたし、貯蔵や流通コストの効率化も図れます。製麺スペースを備えた丸亀のビジネスモデルが次第に“売り”にならなくなっているのです」(同前)