俳優・高倉健さん・菅原文太さんという2人の名優の死とともに、日本のやくざ映画への関心が高まっている。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が厳選した、脇役の熱演に注目したやくざ映画BEST5は以下のとおりだ。
■『仁義の墓場』(1975年/東映)
■『実録 私設銀座警察』(1973年/東映)
■『実録外伝 大阪電撃作戦』(1976年/東映)
■『新仁義なき戦い 組長最後の日』(1976年/東映)
■『鬼龍院花子の生涯』(1982年/東映)
この中で、『実録 私設銀座警察』の最大の見所は、渡瀬恒彦が演じる渡会菊夫の圧倒的なバイオレンス。その魅力を、春日氏が語る。
「この男、まさに“シャブターミネーター”と呼ぶに相応しい存在。相手の反撃をいくら食らってもビクともせず、クスリ欲しさがためだけに平然と人を殺しまくる。兄・渡哲也が『仁義の墓場』で演じた狂犬・石川力夫を上回る迫力です。全身をメッタ刺しにされ地面に生き埋めにされながらもゾンビのように這い出したり、最後にバケツ数杯分の血ヘドを吐きながら死んでいく様子はトラウマもの。日本映画史上、比類なき暗黒的作品といえます」
■かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。本誌にて人気コラム「役者は言葉でできている」を連載中。著書に『天才 勝新太郎』、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊ほか)。最新刊『時代劇ベスト100』(光文社新書)も発売中!
※週刊ポスト2014年12月12日号