筋金入りの「菅原文太ファン」であるライター・杉作J太郎氏は、『仁義なき戦い』『トラック野郎』両シリーズに関する著書もある。「菅原さんの最大の魅力は激しさやコミカルさの中に孤独を漂わせるところ」と語る同氏に、オススメ作品5作を聞いた。
●『現代やくざ 人斬り与太』(1972年)
「ラストシーンに泣かされた。主人公が抗争で潜んでいたところ、差し入れのおにぎりを届けに来た女性が運悪く殺され、おにぎりもメチャメチャに踏みつぶされてしまう。菅原さんは怒り、敵に飛び込んでいく。殺されると分かっていても、行かなきゃいけないときが男にはある」
●『まむしの兄弟 恐喝三億円』(1973年)
「花売りの少女との、白いカーネーションを巡るエピソードは忘れられない名シーン。やくざ映画とバカにしていたら大泣きしますよ」
●『仁義なき戦い 完結篇』(1974年)
「敵方である小林旭に酒に誘われたところ、“そっちとは、飲まん。死んだもんにすまんけえの”と義理を通す。この仁義を現代の子供たちにも伝えたい」
●『ボクサー』(1977年)
「菅原さんはこの作品をやりたくて、寺山修司を監督として連れてきた。文学と芸術に理解の深い菅原さんだからこそ実現した作品」
●『トラック野郎 故郷特急便』(1979年)
「下品でスケベな作品と決めつけてはいけません。菅原さんは両思いになった女性の“歌手になりたい”という夢を優先し、“トラック野郎に女はいらん”と去って行く。このやせ我慢こそ男です」
※週刊ポスト2014年12月19日号