総選挙に打って出た安倍政権は、メディアや言論の統制を推し進めている。在京キー局に選挙報道で偏りがないよう要求する文書を手渡していたほか、安倍首相自身も自らのフェイスブックでは、政策に批判的な書き込みをした人もアカウントを片っ端から排除している。
そうした安倍政権の体質に危機感を募らせているのが、外国メディアの日本特派員の団体「日本外国特派員協会」だ。会員数約2000人という世界最大級の外国人記者組織で、同協会主催の会見は、国内メディアの記者クラブとは違って厳しい質問が出ることで知られ、正面から応えることができない政治家は国際的評価ががた落ちになる。
今年9月には山谷えり子・国家公安委員長が同協会の会見で在特会との関係について厳しく追及された。日本の記者クラブがやらなかった当然の仕事だ。
するとどうなったか。外国特派員協会はこれまで国政選挙の前には毎回、自民党の幹部の会見を開いていたが、今回は自民党側が「投票日前に外国特派員協会の会見には出ない」と出席を拒否。フランスの通信社AFPは「厳しい質問におじけづいたとの批判に火が付いている」と世界に配信(11月28日)した。
ジャーナリスト出身の政治学者で、同協会元会長のカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学教授)が語る。
「自民党は野党の力が衰えて一強支配政治になると、その影響力をメディアコントロールに及ぼそうとしている。日本のテレビ局の番組内容にまで踏み込んで規制する文書を見ると、一党支配の驕りが明らかです。
特派員協会に対しても、安倍政権になって以来、日本の行政機関や企業から、“これを書いてほしい”“このテーマを取り上げてほしい”という要請が強まっている。これまでほとんどなかったことだ。外国人記者には萩生田文書のような露骨な圧力はまだないが、自民党が特派員協会での会見を拒否していることからも、“権力の圧力”が高まっていることを実感している。
もっと問題なのは、NHKや日本の大メディアがそれに抵抗せず、自民党政権の意図に従っていることだ。メディアのそうした姿勢は、国民の知る権利を奪い、有権者の目を曇らせることになる。政権の言いなりになった報道機関の役割放棄こそ、日本にとって非常にシリアスな問題です」
安倍政権はいまや海外メディアからも、中国、北朝鮮と同様、「報道・言論の自由」がない独裁政権とみられているのだ。
※週刊ポスト2014年12月19日号