2015年度から、年金額(受給額)が実質的に下がることがほぼ確実になった。しかもアベノミクスが目標とする「デフレからの脱却」が達成されれば、年金額が下がり続ける可能性がある──。
いったい、どういうことなのか。厚生労働省は2014年6月、年金の財政検証の結果を発表した。財政検証とは5年に1度行われる“年金の健康診断”というべきもので、年金財政の長期的な見通しのもと、将来の年金額がいくらになるのか世代別に詳しく記されている。その財政検証で、2015年度から年金額を毎年減らしていくプランが明記されているのだ。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾さんが解説する。
「年金財政の危機に対し、これまで政府は保険料を増額し、現役世代の負担を増やして対応してきました。しかしそのやり方はもう限界で、年金額を減らし高齢者にも負担を求めることになったのです」
もともと、年金額の決定には物価の上昇に連動して年金額が増加する「物価スライド」が採用されていたが、2004年からは物価の伸びより年金の伸びを抑え、実質的に減額する(物価は上がっても年金額はそれほど上がらない)「マクロ経済スライド」が導入された。
「といっても、導入後はデフレが続き、物価は下がり続けていたため『マクロ経済スライド』は一度も発動されなかったのです。しかし、アベノミクスによって物価が上昇。2015年度初めて発動されることが確実になりました。さらに厚労省はデフレ下でも適用する案を検討中です」(北村さん)
北村さんによれば、実質的に毎年およそ1%ずつ年金が目減りするという。アベノミクスではインフレ目標を2%に設定している。
「仮に物価が2%上がったとき、年金額は1%あがる。年金額が増加しているように思えますが、物価の上昇率に比べれば1%少ないので実質的に減額です」(北村さん)
厚労省のモデルケースでは、現在月額20万円の年金を受け取っている人は仮に計算すると実質月2000円の減額、年2万4000円の減額となる。それが続けば、10年後には現在よりも約20万円も目減りする計算だ。
まさに、「年金氷河期の到来」である。
※女性セブン2014年12月25日・2015年1月1日号