かつて芸能界を賑わせたあの人が今、意外なところで活躍している──。
人気俳優・加勢大周が独立後に以前所属していた事務所と芸名の所有権をめぐって争うという騒動のなか、その事務所側から新たに「新加勢大周」の芸名でデビュー。20日後には現在の名前に改名するという、波瀾のスタートを切った坂本一生さん(43才)。
マッチョな体がウリで主にスポーツ番組に出演していたが仕事にあまり恵まれず、プロレスラーになったり、トラック運転手になったりとさまざまな職を転々とした。
そして今は、全国展開する「便利屋!お助け本舗」の取締役。現場にも行って汗を流す。きっかけは2011年3月11日の東日本大震災だった。
「茨城県水戸市の友人宅に遊びに行っていた時に被災しました。電車が動くまでの10日間、友人宅に泊まって、復旧作業のお手伝いをしようと思ったんです。
お年寄りは80kgのがれきを持てないけど、ぼくにはできる。倒れた塀をその人の敷地内に運んであげるなどしていました。そうして復旧作業を手伝っていると、あるおばあちゃんが“ありがとう”と言って、昆布のおにぎりを持ってきてくれたんです。すごくおいしかったし、すごく嬉しかった。しばらくして知人が便利屋を始めたので、“人のために役立つ仕事だから、ぼくもやろう”と思ったんです」
震災から4か月後に就職した便利屋でさまざまな依頼をこなしてきたが、いちばん大変だったのは、スズメバチの巣の駆除だった。
「駆除専用の装備がなかったんですが、断ると依頼者にリピーターになってもらえないと思って。フルフェイスのヘルメットをかぶり、冬のジャンパーを何重にも重ね、軍手の継ぎ目をガムテーブでぎちぎちにとめて臨みました。夏だったので暑いのなんの。巣はバスケットボールの倍くらいの大きさで、全身にスズメバチが群がってきた時は本当に怖かった。なんとか1人で作業をやり終えましたけど、スズメバチは専門業者に頼んだほうがいいですよ(苦笑)」
この仕事でやりがいを感じるのは、人の役に立てたと実感する時だ。
2011年10月、夫の形見の結婚指輪をなくしたという80代女性からの依頼があった。5LDKの広い木造家屋を朝から探し回った。たんすの裏、机の中、どこをどう探してもどうしても見つからなかった。
「結局日が暮れてしまって、おばあちゃんが作ってくれた夕食をごちそうになったんです。その時、なすの漬け物を出されて、“もしかして?”と思い、糠床の中を探したら、あったんです! おばあちゃんは半べそをかきながら感謝してくれましたね」
女性は、「ありがとう、おじいちゃんに怒られるところだった」と坂本さんに感謝した後、綺麗に指輪を洗うとケースにしまって仏壇に置き、静かに手を合わせていたという。女性は坂本さんの名前さえ知らなかっただろうが、一生彼のことを忘れないだろう。
※女性セブン2014年12月25日・2015年1月1日号