街に師走の木枯らしと不況の冷たい風が吹く中、選挙戦ははや終盤に入った。この選挙、一番目立っているのは全国を回る安倍晋三首相の「ハイタッチ」だ。
選挙といえば握手というのが通り相場だが、首相はまるで得点を決めたスポーツ選手のように、行く先々で有権者にハイタッチを促して回っている。本人は自信と余裕を示しているつもりかもしれない。が、どうにも痛々しく感じてしまうのはなぜだろう。
「雇用と賃金は確実に良くなっている」
アベノミクスをそう自画自賛しても、国民は経済の悪化を肌で感じている。
「生涯で一番健康だ」と健康不安説を否定しても、“無理しているな”とわかる。行動でも言葉でも、無理に無理を重ねて安倍政権の2年間の実績を演出しようとしているが、それが砂上の楼閣でしかないことが有権者には丸見えなのだ。だから痛々しい。
それに比べると、スキャンダルで首相にクビを切られた女性大臣のほうが演技派だ。
小渕優子・前経産相は地元の出陣式でしっかり涙を流して見せ、父の代からの後援者たちの同情心をわし掴みにした。
松島みどり・前法相もトレードマークの赤いジャケットを解禁、これまでちっとも頭を下げなかった猛女が街頭で最敬礼して不祥事を詫びた。
●撮影/太田真三
※週刊ポスト2014年12月19日号