中国に狙われているのはサンゴだけではない。本国で大人気の日本製紙おむつや、『iPhone』最新型などの電化製品に目をつけ、日本で買い漁る中国人。彼らのなかには、観光客を装った転売目的のバイヤー(転売ヤー)が大量に紛れ込んでいる。
中国人バイヤーがこぞって買い占めるほど高い人気を誇るのが、花王の紙おむつ『メリーズ』だ。あまりの人気ぶりに全国的な品薄状態が続き、日本国内のドラッグストアやスーパーなどでは「お一人様2点まで」といった個数制限が常態化している。
「上の子の経験から、肌触りの良いメリーズを下の子にも使ってあげたいのですが、近所のお店はもちろん、郊外のドラッグストアを回ってもまったく手に入りません」
と訴えるのは都内在住の30代の母親だ。大手ドラッグストア店員もこう証言する。
「メリーズは入った端からすぐなくなります。赤ちゃんを育てているようにはとても見えない中国人男性が2~3日おきに来て、次々と買っていくんです」
製造元の花王では、国内3工場をフル稼働して増産を進めているが、それでも肝心の日本の消費者には行き渡らない。ちなみにメリーズは2009年から中国に輸出され、13年からは現地生産も行なわれている。なぜ彼らはわざわざ日本で商品を買い漁るのか。
「粗悪品やコピー商品が氾濫する中国では、国内で売られている商品への信頼がまったくない。たとえ日本と同じ商品が店頭に並んでいても、消費者は日本から直接買い付けたものを選ぶ」
そう話すのは、当の中国人バイヤーだ。
中国では2008年に有害物質「メラミン」入りの粉ミルクで死者を含む5万人以上の被害者を出す事件が発生。国産の育児用品への信頼は地に落ち、日本製品の需要が一段と高まった。ネット上には、日本製の紙おむつや粉ミルクの商品写真と共に、ドラッグストアのレシートを広げた画像を掲載する通販サイトもある。日本で購入した「証拠」を示すためだ。中国人の「純日本製」へのこだわりは、われわれの想像を超えている。
※SAPIO2015年1月号