インフレ目標2%を掲げるアベノミクスにおいて、物価上昇を考慮すると、年金の受給額は実質的に下がっているといえる。しかし、その一方で、受給開始年齢はどんどん遅くなっていくのだ。
国民年金の場合、受給開始年齢は、制度が発足した1961年当初から現在まで65才のままだが、厚生年金は、1942年に前身の制度が発足した時には55才だった。それが、度重なる年金法の改正により60才にまで引き上げられた。
そして1994年の改正により、厚生年金の基礎年金部分の受給開始年齢が、男性は2001年度から、女性は2006年度から、3年に1才ずつ、12年かけて60才から65才まで引き上げられることになった。
続いて2000年の改正により、厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢が、男性は2013年度から、女性は2018年度から、3年に1才ずつ、12年かけて60才から65才まで引き上げられることになったのである。
いくたびの改正で受給開始年齢は10才も遅くなっているが、“引き上げ地獄”はまだまだ終わりそうもない。2014年10月10日、政府の社会保障制度改革推進会議は受給開始年齢について「さらに引き上げることもあり得る」と言及したのである。「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾さんは次のように指摘する。
「政府は67~68才まで引き上げることを画策しています。あわよくば70才までの引き上げを狙っていると見るべきです」
2004年、時の小泉政権は「働いていた時の給料の50%を保証する『100年安心年金』」を打ち出したが、そこからわずか10年しか経っていない。これでは「10年安心年金」ともいえないのである。
※女性セブン2014年12月25日・2015年1月1日号