高校野球、“西の雄”たるPL学園が窮地に陥っている。監督不在の次は、部員募集の停止だ。揺れる名門校の背景には、学校を運営するPL教団の“お家事情”が深く関わっていた。
週刊ポスト誌上で、PL学園の内実を発表し続けるノンフィクションライターの柳川悠二氏が綴る。
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近畿大会で近江高校に敗れ、PL学園にとって2009年夏以来となる甲子園出場(2015年センバツ)が絶望的となった日──私は会場の京都からパーフェクト・リバティー(PL)教団の大本庁がある大阪府富田林市に向かった。
日没が迫る時間帯に到着すると、敗戦から間もないというのに部員数名が自主練習を行い、OBのコーチがグラウンド整備を行っていた。
私は教団を追放された人物の告発記事を書いたことで、教団から目を付けられている。それゆえ敷地内で派手な動きはできず、黙って眺めているだけだったのだが、ナインの方から「こんにちは」と無垢な笑顔を投げかけてくる。
昨年2月に高野連から6か月もの対外試合禁止処分が下り、野球経験のない校長の正井一真が監督代行を務める異常事態は今も続く。事の発端はこれまで先輩たちが幾度も繰り返して来た部内の暴力だ。
しかし懸命に甲子園を目指す現役のナインに罪はない。それでも彼らの気持ちを蔑ろにするように、学園は2014年度から特待生の受け入れを停止し、10月には2015年から部員の募集をしない旨を公にした。
廃部への流れは加速するが、野球部にはかまっていられないというのが学園の母体である教団の本音だろう。そもそも教団自体が存亡の淵に立たされているのである。
1983年の最盛期には公称約265万人いたPLの会員(信者)は、2012年には約93万人にまで落ち込んでいる(いずれも宗教年鑑)。教団の元幹部によると、全会員に配布される機関誌「芸生新聞」の発行部数は、約7万部程度というから、会員の実数は推して知るべし、である。
大阪の真夏の風物詩も風前の灯火だ。毎年8月1日に行われる教祖祭花火芸術は、かつて20万発もの花火を打ち上げる日本屈指の花火大会だった。前述の元幹部はいう。
「以前は2時間近く花火が打ち上げられましたが、経費削減なのか、年々、大玉が少なくなり、今年は40分から50分ぐらいで終了したんです」
※SAPIO2015年1月号