総選挙は安倍自民の圧勝に終わった一方、第3極政党をはじめ野党は壊滅状態となった。そんな惨状だから自民党内では選挙中から「この道の先」をにらんだ権力闘争が進んでいた。
ほんの1か月前、安倍晋三首相の政権基盤は明らかに弱体化していた。景気は急減速、閣僚スキャンダルが連発し、自民党派閥領袖や族議員の有力者からは、消費再増税を先送りして解散という首相の決断にも一斉に反発があがった。
「先送りしただけでは国民は納得しない」(古賀誠・岸田派名誉会長)
「予定通り引き上げるべき」(町村信孝・町村派会長)
「(解散の)大義が示されないと、とんでもないしっぺ返しを受ける」(野田毅・自民党税調会長)
総選挙で自民党が大きく議席を減らせば、反安倍勢力から「安倍降ろし」が噴き出しかねない状況だったのだ。首相のライバル、石破茂・地方創生相も「(増税先送りなら)財政規律の道筋を示すことが必要だ」と首相に距離を置いて乱を待つ構えを見せた。
それだけに、選挙戦が公示前から圧勝ムードになると、安倍首相は早くも攻撃の切っ先を党内の反安倍勢力の粛清に向けた。
まずは公認権を振りかざした。見せしめに増税推進派の野田氏を「公認しない」と恫喝して反対派を震え上がらせると、長老や派閥領袖たちは「(増税延期は)経済を立て直すという首相の不退転の覚悟の表われだ」(野田氏)、「地域の活性化、経済対策をさらに進めるために消費税率引き上げを延期した」(町村氏、石破氏)と先送り賛成に転じて恭順の意を表した。
※週刊ポスト2014年12月26日号