知られざる業界紙や専門誌の世界を紹介。今回は“ファッション業界のオンリーワン専門誌”と言われる『ファッション販売』という雑誌を紹介します。
『ファッション販売』(商業界)
創刊:1976年
月刊誌:毎月1日発売
発行部数:8万2000部
読者層:20~30代のレディース系専門店で働く店長、サブ、向上心のあるショップスタッフ。まれに主婦も。
定価:1132円
購入方法‥全国主要書店の店頭で。
1948年創刊の経営専門誌『商業界』の別冊として1976年に創刊されて以来、婦人服ショップで働く人に読み継がれてきた専門誌だ。
なるほど、ページをめくると、消費者としてショーウインドーの外側からしか見てこなかったショップの“内側”が見えてくる。
たとえば12月号の特集は、〈年末はプロパーを売れ!〉。年明けのバーゲンセールを控え、定価(プロパー)の商品を買い渋っている客の財布を開くためのプロの技が、ディスプレー、アプローチ法、販売トークなど多岐にわたって綴られている。
〈時間帯、曜日別演出法〉という項では、刻々と変わる客層に合わせて、ショーウインドーのマネキンやボディー(マネキンの頭部がないもの)に着せる服や、その周りに置く小物類を変えて、集客につなげる技が明かされる。
郊外のショッピングセンターの場合、週末の午前中は、ランチを中心に若いファミリーが集中する。だから、ママ服を勧める…というのはシロウト考えで、同誌では、子育てママは「制約があればあるほど、実用性とは反対の非日常的要素にも心が動きます」と分析し、ボディーのトータルコーディネートとして「あえて高いヒール」を飾ることを勧めている。
そして、昼過ぎから夕方までは、友達連れや母娘向けの飾りつけをするよう助言。夕方以降はカップルにターゲットを移すようアドバイスしている。
客足が途絶えがちな平日でも、美容関係者の休日の〈火曜日〉は別。「目的買いのひとりショッピングのお客さま」が、本気で服選びに来るからだ。ベテラン美容師の仕事服は、ヘアカットをする時、「カットされるお客さまのヘアのアウトラインがぼやけないよう、白いトップスを着る」と規定した上で、「髪の毛が繊維に入り込まない素材を展示しよう」と、ピンポイントのアドバイスを繰り出す。ファッションのプロとプロの一騎打ちが、目に浮かぶようだ。
※女性セブン2014年12月25日・2015年1月1日号