列島が寒波に襲われる中、街頭で熱狂的な声援を受け続けたのが公明党だった。支持母体である創価学会の「組織力」が際立つ選挙戦現場は、他党とは一味も二味も違っていた。
12月7日、大阪駅からすぐのヨドバシカメラ梅田店前での山口那津男・公明党代表の演説では、山口氏が登場すると、盛大な拍手と「なっちゃーん!」の大声援が巻き起こり、独特の盛り上がりを見せた。これには総理の存在感さえ霞む。
安倍首相は12月6日、公明党の中野洋昌氏の応援で尼崎市(兵庫8区)に入った。大メディアの報道では全国行脚が連日盛り上がっていたように見えたが、尼崎では「有効求人倍率の上昇」などの決まり文句にも反応は今ひとつ。
演説後、安倍氏が聴衆に歩み寄ってハイタッチする場面でも、支援者たちは総理を追う朝日、読売など大手紙のカメラには一瞥もくれず、公明新聞の撮影スタッフを、「ちょっと、ちょっと。こっちや、こっちや!」と呼んでシャッターを切らせ、「絶対に載せてや」と懇願する姿があった。
「総理が尼崎に行った時よりも、同じ日に大阪であった学会芸術部のタレント・久本朋子(久本雅美の妹)の応援演説のほうが盛り上がっていた。自民党候補と一緒に『比例は公明』と呼び掛けたが、演説後に候補者の周りには人が寄りつかず、『朋ちゃん、朋ちゃん』と久本に握手を求める人だかりができた」(自民党関係者)
同じく学会芸術部の顔である姉の久本雅美も、解散後には太田昭宏・国交相の選挙区である東京・東十条の商店街を練り歩き、党の実績をアピールして回った。そうしたタレント信者もフル稼働するのが学会選挙の特徴である。宗教学者の島田裕巳氏が解説する。
「創価学会にとって、選挙は政策を実現させるためのものであると同時に、組織の引き締めの意味も持つ。地区単位で会員を管理し、選挙を地域活動の一環とすることで連帯を強め、教団の求心力を保つのです」
安倍自民の圧勝で集団的自衛権行使のための法改正など平和主義を掲げる創価学会とは相容れない政策が強引に進められる可能性もある。選挙戦での“抜群の存在感”を政権内でも発揮できるか、その真価が問われている。
※週刊ポスト2014年12月26日号