外交は、圧力をかけられたら圧力で返すのが常套だ。だが、日本は「ただ守るだけで一切攻めようとしない」と作家の落合信彦氏は指摘する。
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中国のサンゴ密漁問題に対する日本の対応はただ守るだけに終始した。小笠原で日本人の漁師がサンゴを密漁したら、絶対に逮捕される。法に違反しているのだから当たり前だ。
ところがなぜか、こと中国人がしたこととなると見逃されてしまう。こんなことがまかり通るのは世界中で日本だけだ。政府は罰金を引き上げることで対処したつもりになっているが、普通の国なら、軍や沿岸警備隊を出動させて片っ端から逮捕していくはずだ。北朝鮮や今の中国なら簡単に撃ち殺すだろう。
日本政府があそこまで弱腰だったワケは、安倍晋三が習近平との会談を控えていたからに尽きる。
安倍は中国との関係改善で自分の名を上げたいと考えていたから、その直前に関係が悪化するのを避けたいと思い、問題を「先送り」したのではないか。またしても「先送り」である。
中国はこうした日本の弱腰を完全に笑って見ている。今回のことで、小笠原が「穴」だと完全に見透かしたはずだ。島から島へ移っていけば、日本の海域は支配できるという印象を与えてしまったのだ。
中国は、中国の南から海に乗り出し、東シナ海、南シナ海、インド洋を経て中東へ至る海路を「海のシルクロード」と名付け、それらの海域の浅瀬を埋め立てて島にし、ハブ空港などにして勢力を拡大しようとしている。
日本の小さな島々も、そうした勢力拡大の標的にされている。東南アジアの国々がそうした中国の圧力に抵抗しているなか、日本だけはあっさりと引き下がっている。中国の国家安全部は高笑いしているに違いない。(文中敬称略)
※SAPIO2015年1月号