11月のAPECで安倍晋三首相がようやくこぎつけた日中首脳会談。しかしその成果について、作家の落合信彦氏は「何一つない」と喝破している。
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わずか25分の会談で、うち10分が通訳に費やされているわけだから、実際は15分しか話していない。これで首脳会談と言えるのか。
安倍は完全に習近平にコケにされていた。習近平はプーチンとはグーッと力を込めて握り合う握手をしたにもかかわらず、安倍が求めた握手にはそっと指先で触れるだけだった。で、すぐさま横を向いてしまった。
さらにその後、中国の伝統服を着たのだが、習近平が紫だったのに対し、安倍は青色だった。古くから中国では、紫が最高権威を表すのに対し、青は最下層の労働者の色とされていた。私は以前、中国の高級官僚だった友人に北京のデパートでブランドものの高級なジャケットを買ったのだが、その友人は決してそのジャケットを羽織ろうとしなかった。それが青色だったからだ。
中国ではそうした意味合いを持つ「屈辱の青」を、安倍は着させられ、しかもへらへらと笑っていた。もちろん、国民の反日感情の手前、習近平がそう振る舞わなければならなかった事情もあるのだが、それにしても舐められたものだ。
安倍が舐められる理由は明白で、サンゴ問題のように、中国が何をしてもその場で対応を決断せず、問題を先送りするのが目に見えているからだ。
そもそも、中国人は自分からへらへらとすり寄ってくる人間を評価しない。認めたくはないがプーチンのように、毅然とした態度で対等に振る舞おうとする人間こそ、歓待されるのである。(文中敬称略)
※SAPIO2015年1月号