ミュージシャンASKAの愛人で、覚せい剤取締り違反の罪に問われている栩内香澄美(とちない・かすみ)被告に検察は12月11日、「懲役2年」を求刑した。ASKAは9月中旬、懲役3年執行猶予4年の有罪判決を受けている。
一方、事件に絡むもう1件の裁判が進行中だ。ASKAに薬物を譲渡したとして8月に逮捕された暴力団員ら2人の裁判である。
検察側によると、両被告は今年3月にASKAの自宅(東京・目黒区)で合成麻薬MDMAを56万円、5月に世田谷区の路上で覚せい剤を36万円で譲り渡したという。11月26日の公判では、ASKAが検察の取り調べに、「『コアラのマーチ』や『チップスター』、ビスケットなどお菓子の箱の中に薬物が入っていた」と供述したことが明かされた。
この供述が思わぬ方向で波紋を拡げている。捜査関係者の話。
「過去にも芸能人やミュージシャンが薬物事件で逮捕されることはあったが、売人の逮捕に至るのは極めて稀だ。いくら薬物使用者を厳しく取り調べても、誰からクスリを入手したのかは供述しないからだ」
ところが今回、ASKAが「ブツの受け渡し現場」まで詳細に語ったことが明らかになった。ASKAの証言によって“売人”が逮捕された可能性が高い。
事件に詳しいジャーナリストがいう。
「実刑を避けるため、正直にしゃべったのだろう。ただし、組には迷惑がかかった。組幹部らが相当に腹を立てていたと聞いた」
ASKAの楽曲は業界で高く評価されており、まずは作詞作曲などから復帰の道を探ると見られている。しかし、社会復帰そのものが更生であるとはいえない。栩内被告との密室の出来事や芸能界の薬物汚染などを明らかにし、過去の罪と戦う姿勢を見せ続けることで初めて、ファンも彼を温かく迎えるのだろう。
※週刊ポスト2014年12月26日号