解散総選挙が終わったが、国民には「新しい政治が始まる」という期待も熱気もない。
「2年間の安倍政権に信任を得た」──安倍晋三・首相はそう勝利宣言し、大メディアは「安倍長期政権」の展望を一斉に報じた。
オトモダチ記者のお追従記事である。なにしろ投開票のわずか2日後(12月16日)に朝日、読売、毎日、日経、NHK、日本テレビ、時事通信の編集委員や解説委員が顔を揃えて安倍氏と高級寿司店で杯を交わしていたのだから、報道が国民の感覚とかけ離れるのは当然だ。
しかし、安倍首相が今後の政権運営に自信を持っているようには見えない。むしろ、国民の印象に強く残るのはテレビの開票速報番組で見せた狼狽だ。アベノミクスへの疑問を口にするキャスターに逆上し、イヤホンを外して文字通り聞く耳を持たず、「給料は上がった」「批判するだけでは変わらない」とまくし立てる姿は、見えない影に怯えているようだった。
首相の不安をかき立てるのは、アベノミクスの成功を全く信じていない「サイレント・マジョリティ」だ。
総選挙は投票率が過去最低の52%まで低下し、2009年の政権交代選挙(投票率69%)と比べると、棄権はざっと1700万人増えた。とくに20代の投票率は約49%→30%台前半、30代の子育て世代も約64%→40%台に落ち込んだと考えられる(投票率52%だった2013年参院選の数字を当てはめた)。若い世代は、安倍政治に「将来への期待」を託すことができずに選挙で沈黙した。
果たして今回棄権した人々が次の選挙で投票したらどうなるかは、興味深いところである。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号