解散総選挙は与党が3分の2以上の議席を獲得したが、「憲法改正」を掲げた次世代の党が19議席から2議席と惨敗し、安倍晋三首相が抱いていた「公明抜きの改憲勢力で3分の2を得る」という目論見は潰えた。実は安倍氏にとって、この選挙は明確な敗北だったのである。
北海道ブロックでは、比例代表に候補を立てた市民政党「支持政党なし」の得票が10万票を超えて次世代の党(約3万票)を大きく上回った。若い有権者は、ベテラン政治家が結成した「次世代の党」が自分たちの声を代弁しないと見透かしたのだ。日本共産党の躍進は、「改憲」「大企業優先」の安倍政治に敵対してブレなかったからである。
それに加えて2009年の政権交代を経験し、今回の投票を棄権した1000万人以上の有権者がいる。その立役者だった小沢一郎・生活の党代表が、「自分たちの1票で、長期政権の自民党を倒せた。その意識は日本人の頭の中に植え付けられた」(本誌12月12日号インタビュー)と評したように、彼らは受け皿さえあれば動く物言わぬ大勢力だ。
安倍首相はその沈黙の大衆が本格的に動き出すことを恐れている。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号