ビジネス

安倍首相の「この道しかない」 先にあるのは自滅の海と識者

 安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁は「円安→輸出大企業の業績向上→賃金増」というシナリオを描いていたが、現実は「魔のトライアングル」に突入している。

 トライアングルの恐怖を数字で見てみよう。ファイナンシャル・プランナーの中村宏氏がこう試算する。
 
「2014年4月の消費増税以降の物価上昇率(前年同月比)を見ると、4~10月の平均でプラス3.3%となっています。うち2%は消費増税によるもので、それを引くとプラス1.3%。
 
 今後円安が進むことを考えれば、2015年の物価上昇率は1.5~1.6%程度になると見込まれます。中でも円安の影響が出やすい食料品や家具・生活用品は2.7%、光熱・水道代は3.7%程度の高い上昇率になりそうです」
 
 総務省の家計調査によれば、2人以上の勤労者世帯の消費支出は約31万6000円。それに食料、光熱・水道代など10の項目別に想定される2015年物価上昇率をかけていくと、
 
●食料+2100円
●光熱・水道代+820円
 
 などのように特に影響が大きい8項目で顕著な負担増が予想される。トータルでは月額5400円、年間生活コストは6万円以上の増加となる。
 
「これに厚生年金保険料や健康保険料の引き上げなどを加味すると、新たな国民負担は消費税2%分を超えることになる」(中村氏)
 
 安倍首相は「アベノミクスが継続すれば賃金が上がり続け、消費税分を上回る実質賃金の上昇が実現する」と語っているが、大嘘だ。
 
 実際は、物価上昇の伸びを差し引いた実質賃金は安倍政権下で下がり続けており、2年前から4.6%減となっている。額面で給料が上がったと思っている大企業社員も、本当は賃金が大幅に減っているのだ。
 
 帝国データバンクの調査では、2015年の景気が「悪化」すると見込む企業が「回復」を予想する企業の2倍に上った。企業は「日本の景気はヤバイ」と気づいている。経済学者でRFSマネジメント・チーフエコノミストの田代秀敏氏が指摘する。
 
「景況感が悪化する中で、賃金が安倍首相のいうように上がることなどありえません。米国の投資家向けメディアが、アベノミクスを『レミングの行進』と評しました。集団で海に飛び込み自殺するという伝説があるレミング(ネズミ)のようだというのです。安倍首相は『まっすぐ』『この道しかない』と選挙で訴えましたが、その先にあるのは自滅の海なのです」
 
 安倍氏も黒田氏も、失敗を隠すのではなく一日も早く間違いを認めて「別の道」を探るべきだ。

※週刊ポスト2015年1月1・9日号

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン