中国人の「婚活」にかける熱意は日本の比ではない。中国在住ジャーナリストの西谷格氏(33歳)が、独身生活にピリオドを打つべく、中国版婚活パーティーに参加した。
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上海市内のコーヒーチェーン店の2階へと上がると、薄暗い店内で5~6組の男女が小さなテーブル席で向かい合い、雑談に興じていた。
どこか雰囲気がおかしいと思って観察すると、男たちのアプローチが非常に消極的なことに気が付いた。私の隣にいた男性は重箱入りの中華弁当を黙々と食べ続けており、女性とほとんど会話をしていない。また別のテーブルでは、うつむきながらひたすらスマホをいじってゲームやメールをしており、彼女作る気あるのか! と言いたくなる。
女性の方はというと、最初に対面したのはビン底眼鏡の24歳の女性で、目つきは政治家の石破茂に似ている。話を聞くと、どうやら彼氏いない歴=年齢らしい。他の参加者も決して容姿端麗とは言い難かったが、何回か席替えをした後、日本でもわりとモテそうな部類の福原愛似の26歳女性を発見。服装もスーツスタイルで落ち着いており、見た目の印象は群を抜いている。洗練された雰囲気に魅力を感じ、喜び勇んで話しかけた。
「好きな男性のタイプは?」
「誠実で優しくて向上心のある人」
「相手の収入はいくらぐらいが希望?」
「私と同じ程度ならいいわよ。毎月7000~8000元(13万円前後)ぐらいかな」
拝金主義のはびこる中国なので ”三高(高収入・高学歴・高身長)”を要求されるのかと思いきや、表向きはそうでもなかった。だが、中国では結婚した夫婦は持ち家に住むべきとの価値観が根強く、借家住まいの男性に結婚する資格はないという風潮すらある。そのあたりはどうなのか。
「相手が家を持っていたらベストだけど、なければ2人で30年ローンを組めばいい。ローンは精神的にも負担があるけど、家なしで結婚生活はできない。親が心配する」
大家の都合でいつでも住人が追い出されてしまう中国では、持ち家は絶対的なステータスなのだ。
パーティーでは反日感情ゆえに日本人ということで拒絶されることもなかった。中国人女性との会話では、日本のアニメや夫婦像について質問されるなど終始和やかなムードであった。ただし、日本人というだけでかつてのようなブランド価値があるわけではない。
中国に住む知り合いの60代の日本人男性によると、1990年代終わり頃までは「日本人=お金持ち」という図式があり、日本人というだけでルックスに関係なくモテた時代があったという。しかし、その後中国では日本人以上の富裕層が増え始め、そのポジションは彼らに奪われた。現在ではよくも悪くも「ただの同じアジア人」でしかない。
※SAPIO2015年1月号