毎回、評者に1人1冊を選んでもらう書評コーナー。今回は年末年始に合わせ3冊の本をピックアップしてもらった。経済アナリストの森永卓郎氏が「アベノミクスをどう評価するか」をテーマにピックアップしたのは、以下の3冊だ。
(1)『99%の国民が泣きを見るアベノミクスで貧乏くじを引かないたった一つの方法』 (増田悦佐/マガジンハウス)
(2)『アベノミクス批判』(伊東光晴/岩波書店)
(3)『日本経済はなぜ 浮上しないのか』(片岡剛士/幻冬舎)
以下、森永氏の解説。
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総選挙でも最大の争点になったアベノミクスだが、専門家の間でも評価が大きく分かれている。
(1)は、デフレ待望論だ。アベノミクスのインフレで利益を得るのは金持ちだけという指摘は、少なくとも、これまでのところでは、当たっている。ただ、庶民は投資をせずにひたすら節約すべきというのは、ちょっと夢がない。
(2)はアベノミクスの政策効果の全否定だ。円安さえ金融緩和のせいではないと言う。民主党政権時代に調達した為替介入資金を財務省が先物取引を使って先送りし、安倍政権になってから実質介入に踏み切ったというのだ。これが真実なら、財務省が民主党政権を倒しに行ったとも考えられるすごい話だが、この本には、そんな独自見解が満載だ。
(3)は最も地に足のついた分析で、金融緩和は成功したが、消費増税で景気が失速したというものだ。消費税増税先送りを安倍総理が決断する前に書かれたものなので、政治が著者の提案どおりに動いたことになる。
※週刊ポスト2015年1月1・9日号