日常、慢性的な疲労に悩む人は多いだろう。特に1年の疲れがどっと出てしまうのが年末年始のこの時期。疲れや不調の原因はミトコンドリア不足の可能性も。そんな疲れや不調だけではなく、ダイエットや美肌への対策にも、今話題のアミノ酸“ALA(アラ/5-アミノレブリン酸の略称)”が注目されている。
「年を重ねても、すごく活気がある人がいる一方、いつも疲れている若い人もいます。人間の細胞は、ストレスなどで日々傷ついているのですが、同時に、その傷を修復する働きも体のなかにあり、元気を回復できるようになっています。修復には大きなエネルギーが必要ですが、それを作っているのが、すべての生物の細胞に含まれているミトコンドリアなのです」
細胞の中から病気や老化の原因を探る研究が専門である日本医科大学大学院教授・太田成男さんはそう語る。太田さんによると、ミトコンドリアは、厚さ1センチメートルに換算すると20万ボルトもの電気エネルギーを作っているという。
「ミトコンドリアの質が下がったり、数が減ったりすると、エネルギーの生産量が減り、慢性的な疲労や生活習慣病になりやすいと考えられています」(太田さん)
ミトコンドリアは日常生活に気をつけるだけで、数を増やし質を高めることができるという。
「体に負荷を与えることで、ミトコンドリアの活動を活発にし、増加させることができます。ミトコンドリアの機能を活性化させるアミノ酸やビタミンを積極的に摂ることもいいでしょう。特に近年、ミトコンドリアと同じく体内にあるALAというアミノ酸の働きが注目されています」(太田さん)
ALAを摂取すると、ミトコンドリア機能が活性化される。これにより基礎代謝が上昇するため、内臓脂肪を減少させる効果があるという。
太田さんお勧めのミトコンドリアを元気にする方法は5つだ。
●空腹を感じる
週に1~2回、食事を腹7分目に。わずかな栄養からエネルギーを生み出すために、ミトコンドリアがその数を増やそうとする。
●寒さを感じる
風邪をひかない程度に寒さを感じる時間を作る。冬は、体温を上げようとミトコンドリアが活性化するチャンス。
●背筋を伸ばす
背筋や太ももなど、大きな筋肉を鍛え、正しい姿勢を。ミトコンドリアは筋肉細胞に多い。
●汗ばむ程度の有酸素運動
30秒ほどの小走りと1分程度のウォーキングを5分間ほど繰り返す。空腹時だとさらに良い。
●野菜をしっかり摂る
ほうれんそうやピーマンなどの緑黄色野菜にはミトコンドリアをダメージから守るビタミンなどの抗酸化物質やALAが豊富なので、積極的に食べる。
ALAが多く含まれている食材は、納豆、ピーマン、ほうれんそう、バナナ、たこ、いか、牛ひき肉など。
「これらを1週間ほど続けると、ミトコンドリアは約2割も増え、疲れを感じにくくなっていきますよ」(太田さん)
ミトコンドリアを活性化させる成分、ALAを効果的に摂るにはどうすればいいのだろう。
「私たちが食生活で摂取しているALAは1日約0.05mgとごくわずかです。一方、尿として体外に出るALAは1日約2mg。そのため、ALAを毎日の生活のなかで意識して増やすことはとても重要で、老化にも大きな差が出るでしょう」と話すのは、一般社団法人臨床栄養実践協会の栄養士・足立香代子さん。
「でも尿から排出される2mgのALAを摂取するにはほうれんそうなら14~15kgも食べなければなりません。ALAを効率よく摂るにはサプリメントもひとつの方法です」(足立さん)
「ミトコンドリアが元気になると、疲労回復だけでなく、ダイエットやメタボリックシンドローム、糖尿病などの生活習慣病対策、女性にうれしい美肌にもつながりますよ」(前出・太田さん)
限界まで疲労を蓄積させてしまったり、寝正月になる前に、腹7分目、背筋を伸ばして、汗ばむ程度の有酸素運動、ALAの摂取で早めに体の機能を回復させよう。
※女性セブン2015年1月8日・15日号